肝臓内科


【特色】
 肝臓内科で扱う疾患は、急性肝炎および慢性肝炎・肝硬変、肝がん、脂肪性肝疾患、自己免疫性肝疾患(原発性胆汁性肝硬変・自己免疫性肝炎など)、薬物性肝障害などがあります。日常診療のおもなものはウイルス性肝炎、肝硬変合併症(腹水、肝性脳症、食道静脈瘤)および肝がんの治療です。肝がんの約70%はB型肝炎およびC型肝炎が原因であり、ウイルス性肝炎に対する抗ウイルス療法は肝硬変への進展抑止や肝発がんの予防につながります。B型肝炎およびC型肝炎の治療、肝がんの治療症例数は非常に豊富であり、肝臓疾患全般に専門的で先進的な診療を行っています。また肝がん治療にあたっては外科、放射線科との連携も密に行い、治療方針を決定しています。劇症肝炎や肝不全症例で肝移植が必要な症例については九州大学病院との連携も密に行っています。
 学会活動として、日本消化器病学会専門医認定施設および日本肝臓学会専門医認定施設に指定されており、学会への参加、臨床研究の発表、論文発表につとめています。
 以下に具体的に当院で行われている診断、治療に関して解説します。

【扱う疾患と治療】
○B型肝炎の治療
B型肝炎の治療はおもに核酸アナログ製剤(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル)とインターフェロン治療です。インターフェロン治療の適応は年齢、肝線維化進行の程度、HBV遺伝子型などを考慮して決めています。B型肝炎の活動性が高く、インターフェロン治療の適応でない場合は核酸アナログ製剤の内服治療が適応となります。これらの治療によって肝硬変への進展抑制および肝発がん予防につとめています。

○C型肝炎の治療
2014(平成26)年は、はじめてインターフェロンを含まない内服薬のみの治療が登場し、C型肝炎に対する抗ウイルス治療が非常に進歩した年となりました。その最初の治療として2014(平成26)年9月にダクラタスビル、アスナプレビル併用療法が登場しました。これまでインターフェロンの副作用が懸念されたり、治療効果が期待できなかったりして治療できなかった高齢者、肝硬変、肝がん治療後の方でもウイルス排除できるようになりました。治療開始前には治療効果と密接に関係する耐性ウイルス検査を全例で施行しています。今後、さらに新規治療薬が登場し、多くの患者さんでウイルス排除が可能になります。
インターフェロン治療では、これまでと同様にウイルス排除をめざした標準治療と肝病変進展および肝発がん抑止目的の少量治療とに分け、患者さんの状況に即したテーラーメイド治療を行っています。Genotype Ib 高ウイルス量例ではIL28B SNP遺伝子検査を参考に適応症例を見極め、プロテアーゼ阻害薬のシメプレビルあるいはバニプレビル併用3剤療法にて治療を行っています。今後も積極的に抗ウイルス薬による治療を行い、肝病変の進展抑止や肝がんの予防および再発抑止に努めていきます。
一方、インターフェロン治療によりウイルス排除された症例からの肝がん発症が増加しています。ウイルス排除は、C型肝炎ウイルス感染の治癒ではありますが肝疾患の治癒ではなく、発がんリスクが残ることを患者さんに説明、指導し、定期的な血液検査、画像検査を怠らないようつとめています。

○脂肪性肝疾患
非ウイルス性肝がん(非B非C型肝がん)が増加しており、その原因の多くはアルコール性肝障害と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)です。アルコール性肝障害の治療は禁酒です。非アルコール性脂肪性肝疾患の2-3割程度が重症型のNASHと云われており、肝硬変や肝がんに進展する可能性があります。NASHは生活習慣病として、その原因である肥満や糖尿病のコントロールが重要であり、肥満の改善、食生活の改善、運動などの指導の他、補助的治療である瀉血療法や抗酸化薬による治療を試みています。

○自己免疫性肝炎・原発性胆汁性肝硬変
自己免疫性肝炎および原発性胆汁性肝硬変の経験も豊富であり、肝病変の進行阻止の治療を適切に行っています。

○肝臓がんの診断と治療
肝がんは早期診断すれば十分な治療が可能ですので、血液検査(腫瘍マーカー)、超音波、CT、MRIを駆使して早期診断につとめています。
治療は科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインに従って行っています。内科的には経皮的ラジオ波焼灼療法を積極的に行っていますが、外科手術の適応である症例では外科との連携も密に行い治療方針を決定します。内科的局所療法が困難な症例は外科にて腹腔鏡下、開胸または開腹下マイクロウエーブ凝固療法や定位放射線治療を行い、低侵襲で根治的な治療を心がけています。
局所療法の適応がない多発肝がんや門脈浸潤を伴う進行例に対しては抗がん剤による経肝動脈的化学塞栓療法、持続肝動注化学療法や全身化学療法も積極的に行っています。
さらに肝がん根治的治療後の再発予防目的でC型肝炎に対してはインターフェロン治療を、B型肝炎に対しては核酸アナログ治療を積極的に行い、生存率の向上につとめています。

○食道胃静脈瘤の内視鏡治療
食道静脈瘤破裂症例や破裂のリスクが高い症例に食道静脈瘤硬化療法(EIS)および食道静脈瘤結紮術(EVL)、胃静脈瘤で内視鏡的治療が不可能な症例では放射線科医師の協力でバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)を行っています。

○検査、治療に関する入院について
肝生検目的の入院は1泊2日であり、入院当日の午後に肝生検を行い、翌朝退院となります。
インターフェロン導入治療の入院期間は数日から最長17日間ですが、外来での治療開始も可能です。肝がんに対する経皮的ラジオ波焼灼療法の場合では最短で5日間、肝動脈塞栓術と経皮的ラジオ波焼灼療法併用の場合では10-14日間の入院となります。

2010年〜2014年の主な検査・治療数は以下の通りです。


【診療実績】
  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
肝生検 193 109 103 91 108
肝腫瘍生検 31 13 19 12 16
C型肝炎新規治療症例 92 58 64 45 66
新規治療症例(IFN) 92 58 64 45 59
新規治療症例(IFN free)         7
PEGIFN+リバビリン(RBV)併用 95 44 25 23 19
PEGIFN+RBV
+テラプレビル併用 3剤併用
  4 53 21 0
PEGIFN+RBV
+シメプレビル併用 3剤併用
      6 64
ダクラタスビル
/アスナプレビル
        35
経皮的ラジオ波焼灼療法 92
(実数85例)
83
(実数75例)
68
(実数68例)
60
(実数59例)
49
(実数47例)
経皮的エタノール注入療法 14
(実数14例)
11
(実数11例)
16
(実数16例)
6
(実数6例)
0
スマンクス動注 20        
シスプラチン動注 7
(実数7例)
8
(実数7例)
34
(実数24例)
23
(実数15例)
23
(実数18例)
ミリプラチン動注 164
(実数126例)
150
(実数127例)
77
(実数67例)
19
(実数19例)
6
(実数6例)
エピルビシン動注     28
(実数28例)
103
(実数80例)
110
(実数83例)
動注ポートによる持続動注 1 1 4 6 8
分子標的薬治療
(ソラフェニブ)
24 28 17 16 10
定位放射線治療         18
内視鏡的食道静脈瘤硬化療法
または結紮療法
35
(実数31例)
32
(実数29例)
29
(実数28例)
32
(実数21例)
34
(実数33例)
B型肝炎に対するインターフェロン(新規) 4 3 5 3 3
エンテカビル
(継続例を含む)
117 128 111
(併用4例)
134
(併用6例)
133
(併用6例)
ラミブジン
(継続例を含む)
56 54 47
(併用33例)
42
(併用31例)
41
(併用30例)
アデホビル
(継続例を含む)
36 35 34 30 28
テノホビル
(継続例を含む)
        2


当院発行の広報誌「こんにちは せいてつ病院です(2009年4月、2012年10月)」より肝臓内科に関連する記事を抜粋しました。(PDF形式)
C型肝炎(PDF形式/290KB)
肝硬変・肝がん治療の進歩(PDF形式/3,755KB)


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